発足の志

デジタル教科書・教材やそれを活用した実践について、学術的に追究し、我が国の教育のこれからの発展に資すること

運営の3本柱

  1. 「発足の志」の基に立場を超えて結集し、中立性の高い運営をする
    • 「発足の志」に賛同した者が、それぞれの研究分野、所属学会や研究会の枠など、立場を超えて集まる学会とする。
  2. 研究者と現場教員が共に創る会とする
    • 研究者と実践者が互いを尊敬し、手を携えて運営する学会とする。
    • 研究者と実践者との共同研究を積極的に推進する。新進の研究者・実践者も気概をもって新しい場を創っていける、活力のある団体とする。
  3.  他の団体と幅広く連携する
    • 国内外を問わず、デジタル教科書・教材を推進する各種団体と積極的に連携し、研究を推進していく。

設立趣意書

高度なデジタル技術に支えられた情報社会の発展は、我々の生活を豊かにし、仕事の方法を大きく変化させ、これまで成しえなかったことが開花され現実化しています。これは教育の現場においても例外ではなく、児童生徒の学習方法が大きく進展する可能性を秘めています。

 2010年5月に内閣IT戦略本部にて決定された「新たな情報通信技術戦略」では、今後の政策の1つとして「デジタル教科書・教材などの教育コンテンツの充実」が掲げられています。またその工程表の中には、「児童生徒1人1台の情報端末による教育の本格展開の検討・推進」が盛り込まれており、その流れを受けて2020年度の実現を目標に進められています。

 一方で日本よりも早くデジタル教科書・教材の導入が進められた国々もあり,その導入時期や導入形態について話題に上ることも多くなりました。また我が国においては教科書検定制度もあり、デジタル教科書・教材をどう捉え、どのように推進すれば良いかについても、未だに議論が尽くされていない状況です。

これらデジタル教科書・教材に関する可能性の追究や、課題の発見、並びにその解決法の提案、またデジタル教科書・教材を活用した実践について、学術的な研究を通じて明らかにし、我が国の教育のこれからの発展に資することを、この学会の目的とします。

 デジタル機器上で、教育内容の提示あるいは児童生徒の学習活動や評価を行う試みは、長年教育の情報化が推進されてきた歴史とともに、教育現場の内外におけるさまざまな場面で試行されていますが、未だ十分に現場に位置づいていないといった状況が続いています。

ところが、タッチ機能付きゲーム機の発売を契機とした、画面へ直接筆記できる各種学習ソフトの開発販売、また2010年度以降、政府にて推進されている「フューチャースクール推進事業」及び「学びのイノベーション事業」、さらに同年以降さまざまなメーカーから発売されているパッド型端末の普及を受けて、デジタル技術を用いた教育活動の変化はさらに加速していると言えます。加えて、現代社会はグローバルネットワークが構築され、国際的な競争社会へと突入し、国際学力調査などの結果も明らかとなりました。このような中で我が国の学習に対する理論も大きく揺り動かされることとなりました。特にタッチ機能付きデバイスの普及と同時期に「デジタル教科書」という言葉が出現したことによって、紙面や黒板上に印刷や筆記という固定化されやすい表現でしか扱えなかった、教育における学習メディアの歴史に、大きな選択肢が加わることとなりました。

教育に携わる人々がこの一連の流れを評価し、そして児童生徒のより良い学習活動に向けて行動を続けるためにも、デジタル教科書・教材に関する学術的な研究活動をこれまで以上に活性化させなければならないと考えています。デジタル教科書・教材に関する研究活動を推進していくためには、教育現場における実践者の協力が不可欠です。当学会としては、デジタル教科書・教材の推進、実践、研究活動に携わる小学校・中学校・高等学校・大学の教員の交流、情報交換、共同研究の場として役割を果たすとともに、またデジタル教科書・教材を推進する各種団体とも積極的に連携していきたいと考えています。つきましては研究者と実践者の相互の協力により、デジタル教科書・教材を用いた実践の報告を数多く提言・投稿していただき、当学会としても広く活用事例を集め、広く追究していきたいと考えています。

 日本デジタル教科書学会の設立の趣旨に賛同いただき、多くの皆様にご入会いただきますよう、心よりお願い申し上げます。

2012年2月29日 発起人 片山敏郎 上松恵理子 眞壁豊 久富望