(※これは、前会長の平成24年就任時あいさつとなります。現在の会長のあいさつはこちら)
この度、日本デジタル教科書学会の初代会長になりました、片山敏郎です。どうぞよろしくお願いいたします。私は、一介の小学校教諭にすぎません。しかし、だからこそ日々の授業で学習者用デジタル教科書の必要性をずっと感じてきました。子どもたちに、質の高い学習者用デジタル教科書を与えて適切な働きかけをすれば確実に学力が向上することは、これまでの子どもとのかかわりの中で感覚的に確信していました。しかし、実際にどのくらい効果があるのか、また、どのような配慮が必要なのかは、感覚ではなく、学術的に明らかにしなければならないことです。
今の日本の状況は、残念ながら、質・量ともに、十分な学習者用デジタル教科書・教材が整備されていない状況です。また、研究のフィールドとしてもデジタル教科書に関する研究は、様々な学会で個別に取り上げられはじめてはおりますが、それらの成果をつなぐ場がありませんでした。諸外国の取組を見ると、明らかにデジタル教科書を活用した授業に研究のベクトルがシフトしはじめております。一方で、我が国においてはその変容のスピードにおいて若干のもどかしさを感じることがあります。それは、研究・実践ともに少なく、明確な学術的な成果が蓄積されていないことが原因の一端であると思っています。
そこでこの度、志を同じくする研究者・実践者の方々とともに本学会を立ち上げ、学術的な成果をあらゆる角度から検証・収集・蓄積していくことで、学習者用デジタル教科書・教材が子どもたちの学力を高めたり、学びの質を豊かにしていったりすることを明らかにし、世の中に広く示していこうと考えました。
本学会は、研究者や、熱心な実践者だけのものではありません。学習者用デジタル教科書・教材の可能性を信じ、学術的にその可能性を検証していくことで、日本の教育の向上に少しでも貢献していきたいと考える全ての方々にご入会いただきたいと考えています。様々な研究分野を横断し、「デジタル教科書・教材の可能性」をあらゆる角度から、共に明らかにしていきましょう。どうぞ、よろしくお願いいたします。
平成24年6月18日 日本デジタル教科書学会 会長 片山 敏郎